ふるさと納税をめぐる制度改正が、数年がかりで段階的に進んでいます。2025年10月のポイント付与禁止に続き、2026年10月からは返礼品の「地場産品基準」が強化され、自治体が使える寄附金の割合を段階的に60%まで引き上げる新基準が始まる。2028年度分以後の住民税では、特例控除額に193万円の上限も設定される。財務省・総務省の一次資料で確認できる具体的な数字とスケジュールを整理する。
ポイント禁止に続き、返礼品基準も見直しへ
2025年10月1日、総務省の通達により、寄付ポータルサイト経由の寄付に対する独自ポイント付与が全面的に禁止されました(クレジットカードや電子決済サービス自体の通常ポイントは対象外)。これに続き、財務省の「令和8年度税制改正の大綱」および総務省の告示改正によると、2026年10月1日以後の指定からは、返礼品の「地場産品基準」が明確化されるとともに、「寄附金活用可能額」(寄附額のうち、返礼品の調達費や送料などの募集費用を差し引いて、自治体が実際に地域のために使える金額)が寄附額の一定割合以上であることが新たに求められます。
この割合は段階的に引き上げられ、財務省の資料によると2026年10月1日〜2027年9月30日は52.5%以上、2027年10月1日〜2028年9月30日は55%以上、2028年10月1日〜2029年9月30日は57.5%以上、2029年10月1日以降は60%以上とされています。現行制度では、募集に要する費用を寄附額の5割以下とする基準でしたが、新制度は「自治体が自由に使える金額」そのものの下限を段階的に引き上げる設計に変わります。
数字で見る制度改正のスケジュール
| 時期 | 変更内容 |
|---|---|
| 2025年10月1日〜 | ポータルサイト独自のポイント付与を禁止(実施済み) |
| 2026年10月1日〜2027年9月30日 | 地場産品基準の明確化。寄附金活用可能額52.5%以上 |
| 2027年10月1日〜2028年9月30日 | 寄附金活用可能額55%以上 |
| 2028年10月1日〜2029年9月30日 | 寄附金活用可能額57.5%以上 |
| 2029年10月1日〜 | 寄附金活用可能額60%以上 |
| 2028年度分(令和10年度分)以後の個人住民税 | 特例控除額に193万円(道府県民税77万2千円+市町村民税115万8千円)の上限を新設 |
「6割ルール」という呼び方が広まっていますが、正確には2026年10月の52.5%から始まり、1年ごとに2.5ポイントずつ引き上げられて2029年10月に60%へ到達する、4段階の経過措置です。「いきなり6割になる」わけではない点は誤解しやすいポイントです。
「寄附金活用可能額」「6割ルール」とは何か
これまでのふるさと納税は、返礼品の調達費や送料、広報費などの「募集に要する費用」を寄附額の5割以下に抑えることが自治体の指定基準の一つでした。今回の見直しでは、これに加えて「寄附金活用可能額」、つまり寄附額から募集費用等を差し引いた、自治体が実際に地域のために使える金額の割合そのものに下限を設けます。この下限を2026年10月から段階的に引き上げ、最終的に2029年10月以降は寄附額の60%以上を自治体が自由に使える金額として確保することを求める設計です。「経費を5割から4割に下げる」という単純な言い換えではなく、自治体の手取り分に直接下限を設けるという制度設計の違いがある点は押さえておきたいポイントです。
地場産品基準についても、総務省の告示改正で明確化が進められています。返礼品の原材料や加工工程について、価格に基づく算出を原則としつつ、「その地域(区域内)で生じた付加価値が返礼品全体の価値の過半を占めること」を、返礼品の製造等を行う事業者が証明し、自治体が公表する仕組みが導入される見通しです。単に「加工工程の半分以上を区域内で行う」という時間・工程数の基準ではなく、価格・付加価値ベースで判断される点に注意が必要です。
制度が抱えてきた課題
ふるさと納税は、寄付という形を通じて自分の選んだ自治体を応援できる制度として広く定着してきましたが、その一方で「返礼品目当ての節税」という側面や、ポータルサイトのポイント還元競争が過熱するといった課題も指摘されてきました。2025年10月のポイント付与禁止は、こうした「寄付の本来の趣旨から外れた競争」に歯止めをかける狙いがあったとされています。今回の地場産品基準の明確化や寄附金活用可能額の引き上げも、同じ方向性の一連の見直しの続きと位置づけられます。
あわせて、財務省の「令和8年度税制改正の大綱」では、ふるさと納税の特例控除額(住民税から控除される金額)についても見直しが行われます。現行は「個人住民税所得割額の2割」が上限でしたが、2028年度分(令和10年度分)以後の個人住民税からは、これに加えて「道府県民税77万2千円・市町村民税115万8千円(合計193万円)」という絶対額の上限のいずれか低い方が適用されます。個人住民税は前年の所得・寄付に基づいて課税されるため、実質的には2027年中(令和9年)の寄付から、この上限の影響を受け始めることになります。
寄付先選びはどう変わる?
ふるさと納税を利用している人にとって:2025年10月以降、ポータルサイトのポイント還元を目当てに寄付先を選ぶメリットはなくなりました。2026年10月以降は、基準を満たさない返礼品が取り扱い対象から外れる可能性があり、これまで人気だった返礼品が選べなくなるケースも出てきそうです。多くの利用者にとって、寄付できる上限額そのものが大きく変わるわけではありません。
ごく一部の高所得者にとって:2028年度分以後の住民税では、特例控除額の計算上193万円を超える寄付をしても、その超過分は控除の対象外になります。これは「年収1億円以上を対象にした規制」として制度が作られているわけではなく、控除額そのものに絶対額の上限が新設された結果として、計算上の控除額が193万円を上回るような一部の高所得層に影響が及ぶ、という理解が正確です。
自治体にとって:寄附金活用可能額のルールが完全施行されれば、同じ寄付額でも自治体が自由に使える金額の下限が保証されることになり、地域振興により多くの財源を充てられるようになる可能性があります。一方で、返礼品の調達や広報にかけられる費用は相対的に制限されるため、寄付を集める競争のあり方そのものが変わっていくとみられます。
段階的な引き上げスケジュールの中身
確定していること:2025年10月のポイント付与禁止はすでに実施済みです。2026年10月からの地場産品基準の明確化と寄附金活用可能額の段階的な引き上げ(52.5%→55%→57.5%→60%)、2028年度分以後の住民税における193万円の特例控除上限は、財務省の「令和8年度税制改正の大綱」および総務省の告示改正として、具体的な数字・時期まで示されています。
まだ確定していないこと:個別の返礼品が新しい地場産品基準に照らして実際にどう判定されるか、また制度変更後に寄付総額や人気自治体のランキングがどう変化するかは、2026年9月12日時点ではまだ分かりません。
よくある質問
Q. 今年(2026年)中に寄付する分は今回の見直しの影響を受ける?
A. 地場産品基準の明確化と寄附金活用可能額の新基準は2026年10月1日以後の指定から適用され、住民税の193万円上限は2028年度分(実質2027年中の寄付)から適用されます。2026年9月・10月上旬までの寄付は、これらの新基準の影響を受けにくいと考えられますが、返礼品の取り扱いは自治体の対応状況にもよります。
Q. 「6割ルール」が完成したら、寄付する側にとって何が変わる?
A. 直接的に寄付者自身の控除額や上限が変わるわけではありません。変わるのは、寄附額のうち自治体が実際に地域のために使える金額の割合です。返礼品にかけられる費用の上限が相対的に厳しくなるため、返礼品の内容や選べる品目が変化する可能性があります。
Q. 193万円の上限は自分に関係ある?
A. 現行制度でも特例控除額の上限は「個人住民税所得割額の2割」です。2028年度分以後はこれに加えて193万円という絶対額上限のいずれか低い方が適用されます。一般的な寄付額の範囲では現行の「2割」上限の方が先に効くケースが多く、193万円の絶対額上限は主に高額寄付をする層に関係します。
Q. ポイント制度がなくなった今、返礼品はどう選べばいい?
A. 本記事の情報源となっている総務省・財務省の資料では、返礼品選びの基準までは示されていません。地場産品基準(付加価値が地域内で生じているか)を満たしているかどうかは、今後自治体が公表する情報を確認することになります。
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※この記事は2026年9月12日時点で確認できた財務省・総務省の資料に基づいています。個別の返礼品の判定状況など、続報が判明し次第追記する予定です。




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