ポータブル電源メーカーのEcoFlow Technology Japanは2026年9月15日、「RIVER Pro」と専用エクストラバッテリーについて、9月24日から自主回収プログラムを始めると発表した。長期間の使用によるバッテリー劣化が原因とみられる発煙・発火が確認されたためで、対象は本体約5万7000台、エクストラバッテリー約6600台にのぼる。同社は今年2月にもファームウェア更新による対策を呼びかけていたが、更新した人はわずか14.3%にとどまっていた。その間にも3件の火災が発生し、うち1件では軽いけがを負った人もいた。今回はファームウェア更新ではなく、製品そのものを返却してもらう対応に切り替えた。
3件の火災、うち1件はけが人も
消費者庁が2026年6月5日に公表した資料によると、EFRIVER600PRO-JP(RIVER Pro)で2026年4月29日(北海道)、4月30日(神奈川県)、5月24日(新潟県)の3件の火災が発生した。いずれも製品や周辺を焼損する火災で、5月24日の事故では1人が軽傷を負っている。消費者庁は「事故原因は現在調査中で、後述するリコール事象によるものかどうかは現時点では不明」としており、この3件がファームウェアの不具合そのものによるものと確定したわけではない。ただし対象製品での重大製品事故報告は、2020年度以降この3件のみだったことも同時に示されている。本体とエクストラバッテリーを合わせた対象台数は約6万3600台にのぼる一方、報告された火災は3件にとどまる。「対象製品を持っていれば発火する」というほど高い確率で起きている事象ではないが、それでも実際に火災とけが人が出ている以上、軽視してよい数字でもない。
なぜ火災情報が公になるのか
そもそも、こうした個別の火災情報が公表されるのは偶然ではない。消費生活用製品安全法は、製品の製造・輸入事業者に対し、重大製品事故(死亡・重傷・火災など)が起きたことを知った場合、知った日から10日以内に消費者庁へ報告するよう義務づけている。消費者庁はこの報告を受け、一般消費者への危害の拡大を防ぐ必要があると判断すれば、製品名や型式、事故内容を公表する仕組みだ。今回の3件も、この報告義務に基づいてEcoFlow Technology Japanから消費者庁へ寄せられ、6月5日の公表につながった。つまり、9月の自主回収の背景には、2月の呼びかけだけでは事故を防ぎきれなかったという事実を、企業が黙っていられない制度上の仕組みがあったことになる。
発端は2026年2月、セルの異常発熱
そもそもの発端は2026年2月5日にさかのぼる。EcoFlow Technology Japanはこの日、RIVER Proと専用エクストラバッテリーでセルの異常発熱による火災事故が多発していたとして、ウェブサイトで注意喚起を行い、対象製品を持つユーザーにファームウェアアップデートの実施を呼びかけた。更新の中身は、バッテリーの使用年数に応じて充電パラメータを最適化し、充電時の負荷を下げるというものだ。ファームウェアという言葉から連想しやすい「ソフトの不具合を直す」対応ではなく、劣化したバッテリーへの負荷そのものを抑えることで発熱・発火のリスクを下げる、いわば対症療法にあたる。
ところが、この呼びかけから4カ月近くたった2026年6月1日時点で、RIVER Pro本体で更新を終えたユーザーは対象の14.3%にとどまっていた。ポータブル電源はキャンプや災害時の備えとして買われることが多く、日常的に開いて操作する製品ではない。メーカーが呼びかけても、対象者の多くが更新の告知に気づかないまま使い続けていた可能性がうかがえる。実際、消費者庁の資料でも「ファームウェアアップデートをしていない一部のユーザーから発煙・発火の報告があった」一方、「アップデートを実施したユーザーからはその後の事故報告は確認されていない」とされており、更新自体には一定の効果があったとみられる。問題は、その更新が対象者の1割強にしか届いていなかったことだ。
「呼びかけ」から「回収」への切り替え
この普及の遅れを踏まえ、EcoFlowは9月15日、対応方針を転換した。ユーザーにファームウェア更新を待つのではなく、製品そのものを返却してもらい、代わりにギフトカードを渡す方式に切り替えたのだ。本体を返却した場合は4万円分、専用エクストラバッテリーを返却した場合は1万円分のギフトカードが、EcoFlow公式ストアで使える形で提供される。ファームウェア更新の実施有無にかかわらず、返却プログラムの対象になる。受付は9月24日から公式サイトのオンライン申請フォームで始まり、ネット環境がない場合は電話でも申し込める。
「呼びかけ」から「回収」への切り替えは、遠回りに見えて合理的な判断でもある。更新を待つ方式は、対象者全員が能動的に動いてくれることが前提になる。しかし現実には14.3%しか動かなかった。ならば、使われなくなった旧型の劣化バッテリーそのものを市場から回収してしまう方が、火災リスクを根本的に減らせる。ギフトカードという実利を用意したのも、返却への心理的なハードルを下げる狙いとみられる。
対象になるのはどんな人か
対象製品は、2020年11月から2024年4月に販売されたRIVER Pro(型番EFRIVER600PRO-JP)本体と、専用エクストラバッテリー(いずれも2023年に生産終了)。それ以降に発売された後継モデル「RIVER 2 Pro」などは対象に含まれていない。自分の製品が対象かどうかは、本体底面のラベルに記載された品番やシリアル番号で確認できる。まだファームウェア更新をしていない対象製品を持っている場合、消費者庁は「直ちに使用を中止し、速やかに問い合わせ先へ連絡する」よう呼びかけている。更新済みの場合でも、返却プログラム自体には申し込める。
ポータブル電源の火災、EcoFlowだけの問題ではない
今回のようにリコール中の製品でその後も事故が起きる例は、EcoFlowに限った話ではない。Anker Japanは、セル製造過程での異物混入の可能性を理由に「Anker PowerCore 10000」(型番A1263、2022年12月~2025年10月販売)のリコールを2025年10月から進めているが、2026年6月11日には長野県の宿泊施設で充電中の同製品から火災が発生している。この事故も原因は調査中で、リコールとの関連は明らかになっていない。バッテリー製品のリコールでは、対策が公表された後も、更新や回収が行き渡るまでの間に同種の事故が起きてしまう構造的な難しさがあるといえる。
EcoFlow自身も、今回が初めてのリコールではない。同社は2025年1月にも、大容量モデル「EFDELTA」について2023年7月に発生した火災事故を理由に、対象約2万9000台を後継機「DELTA 2」へ無償交換するプログラムを実施している。今回のRIVER Proも、それに続いて日本国内で対応を迫られたケースの一つだ。
なぜリチウムイオン電池は経年で危険性が増すのか
今回の火災の原因として挙げられている「バッテリー劣化」は、リチウムイオン電池特有のリスクだ。充放電を繰り返すうちに電極内部で微細な変化が進み、内部抵抗が高まって充電時に発熱しやすくなる。劣化が進んだセルに通常と同じ電流で急速充電を続けると、発熱が制御しきれず発火につながることがある。EcoFlowが2月に配布したファームウェア更新が「使用年数に応じて充電パラメータを最適化する」内容だったのは、まさにこの経年劣化に合わせて充電の強さを抑える措置だったとみられる。ポータブル電源やモバイルバッテリーのように大容量のセルを積んだ製品ほど、劣化時の発熱量も大きくなりやすく、リコール対応が長期化しやすい一因になっている。また、ポータブル電源はキャンプや防災用品として「使うとき以外は倉庫や車内にしまっておく」という保管のされ方をしやすい製品でもある。高温になりやすい環境での長期保管は、リチウムイオン電池の劣化を早める要因の一つとされ、日常的に持ち歩くスマートフォンなどとは異なる劣化の進み方をする可能性がある。
今後の見通し
返却プログラムの申し込み期限は、現時点で公表されていない。また、9月15日時点で更新率がどこまで改善したかについても、消費者庁・EcoFlowともに公式な発表はない。今回の事故3件についても、消費者庁は原因調査中としており、ファームウェアの不具合との因果関係が確定したという発表はまだない。これらの点は今後の発表を待つ必要がある。
まとめ
今回のRIVER Proの経緯が示しているのは、リコールは「発表した時点」で完了するわけではないという当たり前だが見落とされがちな事実だ。ファームウェア更新という対応そのものは有効だったとみられるにもかかわらず、更新率が14.3%にとどまったことで、3件の火災という結果につながった可能性が消費者庁の資料からもうかがえる。メーカー側の呼びかけを消費者が受け取り、実際に行動するところまでを含めて、初めてリコールは機能する。防災用品として長期間しまい込まれがちなポータブル電源だからこそ、「持っているかもしれない」と思ったら一度、製品ラベルを確認してみる価値がある。
よくある質問
Q. 自分のRIVER Proが対象かどうかはどこで確認できますか。
A. 本体底面のラベルに記載された品番・シリアル番号で確認する。判断がつかない場合はEcoFlow Technology Japanの問い合わせ窓口(電話050-3355-3196、平日10時~19時)に連絡する。
Q. すでにファームウェア更新をしていれば安全ですか。
A. 消費者庁の資料では、更新済みユーザーからのその後の事故報告は確認されていないとされている。ただし本記事の情報源では「絶対に安全」と断定する記述はなく、更新済みでも返却プログラムの対象になる。
Q. 返却するとどのくらい補償されますか。
A. RIVER Pro本体を返却すると4万円分、専用エクストラバッテリーを返却すると1万円分の、EcoFlow公式ストアで使えるギフトカードが提供される。
Q. 返却の申し込み期限はありますか。
A. 本記事の情報源では、申し込み期限は示されていない。
情報源
- https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/2140927.html
- https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_260605_01.pdf
- https://ascii.jp/elem/000/004/408/4408541/
- https://www.recall.caa.go.jp/result/detail.php?rcl=00000034892&screenkbn=06
- https://ascii.jp/elem/000/004/432/4432487/
- https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1653210.html




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