結論から言うと、千葉市の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2026」(通称ロッキン)は台風25号の接近を受け、9月21日(月・祝)の最終日公演を中止した。同じ週末に山梨県山中湖で開催されていたアイドルフェス「SPARK 2026 in YAMANAKAKO」は同じ21日の公演を予定通り決行したが、出演予定だった30組超のアイドルグループが安全上の理由から相次いで出演を辞退した。同じ台風、同じ21日という条件のもとで、二つのフェスの対応は分かれた。
台風25号接近でロッキン最終日が中止に
ロッキンは千葉市蘇我スポーツ公園を会場に、2026年は9月12日・13日と19日・20日・21日の計5日間、2つの週末に分けて開催されていた。19日・20日は予定通り行われたが、最終日となる21日について、運営元のJフェス事務局は9月20日、公式サイトとSNSで中止を発表した。
発表文では「台風25号の影響により本日を大幅に上回る雨量が終日にわたって予測されており、台風の最接近に伴い強風も見込まれています」としたうえで、「会場内外の安全確保が困難であると判断」したと説明している。21日の開催可否については前日の時点で慎重に検討を続けていたが、予測される影響が悪化したため、来場者・出演アーティスト・スタッフの安全を最優先にこのタイミングでの中止を決断したという。21日にはAdo、ano、女王蜂、10-FEET、Fear, and Loathing in Las Vegas、マキシマム ザ ホルモン、syudouなど計25組の出演が予定されていた。
払い戻しの対象は、21日の1日券、21日を含むセット券、クロークチケットの事前購入分、オフィシャルグッズのプレオーダー購入分。具体的な手続き方法は9月中に改めて公式サイトやアプリで案内するとしている。なお同じ21日には、台風の影響で「東京ゲームショウ2026」の5日目や、ポケモンカードゲームの大会「チャンピオンズリーグ2027 横浜」なども中止となっており、台風25号は千葉・東京近郊の複数の大型イベントに同時に影響を及ぼした。
中止を受け、出演予定だったアーティストの側でも独自の対応が相次いだ。ヤバイTシャツ屋さんは公式YouTubeで生配信、アンジュルムは披露予定だったセットリストをそのままYouTubeでプレミア公開、ももいろクローバーZは夏の横浜スタジアム公演の映像を配信するなど、それぞれが「披露できなかったステージ」を別の形でファンに届けた。なかでもAdoは音楽ではなくマインクラフトの実況配信という異例の対応を取り、自身のSNSで「ゲームしてるの自分だけで恥ずかしい」とコメントしつつ配信を実施している。
台風による中止は今回が初めてではない
ロッキンが天候を理由に1日を丸ごと中止したのは、今回が初めてではない。2000年の初開催時には、2日目に台風の接近で雨と風が強まり、ステージの一部が破損する被害が発生。THE YELLOW MONKEYのライブを最後に、その日の公演が途中で打ち切られた。当時の会場だった茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で21年間にわたって開催が続いた後、2022年に会場を千葉市蘇我スポーツ公園へ移転している。
会場移転から間もない2022年8月13日には、その最終日が台風8号の影響で中止となっている。2000年は「荒天でも公演を続け、途中で打ち切った」形だったのに対し、2022年と2026年はいずれも「開催前の時点で中止を決断した」という違いがある。荒天でも粘って様子を見るのではなく、予報段階で早めに判断を下す方向に、運営側の安全対策の考え方が変わってきたことがうかがえる。
同じ週末のSPARKは「決行」を選択、30組超が出演辞退
一方、同じ9月21日から23日にかけて山梨県・山中湖交流プラザきららで開催されていたアイドルフェス「SPARK 2026 in YAMANAKAKO」は、対照的な対応を取った。主催者は9月20日19時ごろ、21日の公演を予定通り開催すると発表。荒天でも来場を見送る観客には振替・払い戻しで対応するとした一方、会場での開催自体は取りやめなかった。
これを受け、出演予定だったアイドルグループの間では、自主的な出演辞退が相次いだ。9月22日時点で確認できるだけでも「僕が見たかった青空」「ドラマチックレコード」「#よーよーよー」「まねきケチャ」「なんキニ!」など30組以上が辞退を発表している。各グループが挙げた理由はおおむね共通しており、「帰路の交通手段を確保できない可能性」「高速道路の通行止めなど交通機関の状況」「移動時間帯にも天候悪化が予想される」といった点から、メンバーやスタッフの安全を優先したという。会場そのものは開いていても、遠方から公共交通機関やバスで移動するグループにとっては、公演中の安全よりも「行き帰りの安全」がリスクになったことがうかがえる。
なお、SPARKの初日である21日が実際にどのような来場者数・運営状況になったかについて、本稿執筆時点(9月22日)で主催者からの総括は発表されていない。
台風25号はどれほどの勢力だったか
気象情報各社によると、台風25号は9月21日17時時点で中心気圧960hPa、中心付近の最大風速40メートル、最大瞬間風速55メートルの「大型」の台風で、千葉県勝浦市の南約110キロの海上を時速35キロで北東に進んでいた。伊豆諸島や伊豆半島は暴風域に入り、関東地方では台風本体が接近する前から波が高まり、風雨が強まった。その後、房総半島の南方海上を北東へ進み、本州への上陸は確認されないまま、9月22日21時には日本のはるか東で温帯低気圧に変わった。気象各社によると、台風25号の接近に伴う大雨や暴風で各地から被害の報告も相次いでいる。上陸しなくても、これだけの規模の台風が沿岸部をかすめれば、屋外イベントにとっては開催の可否を左右する脅威になるということだ。
猛暑を避けて9月に移した先にあった台風リスク
ロッキンは2023年・2024年まで8月上旬から中旬に開催されていたが、2025年から9月のシルバーウィーク前後、2つの週末に分けて開催する形に変更した。2026年もこれを踏襲し、9月12日・13日、19日・20日・21日という日程になっている。この変更は台風対策として行われたものではない。運営元は2025年の変更発表時、「ここ数年の気候変動の中、8月に大型フェスを開催することには、運営側のさまざまな工夫が必要」になっていたとし、蘇我スポーツ公園での開催が1日あたり6万人規模に達する大型フェスであるため、来場者・スタッフ・出演者の熱中症リスクを避ける観点から「8月での開催を継続することは困難」と判断したと説明している。この検討自体は5年ほど前から続けられていたといい、コロナ禍や会場移転の調整が優先された結果、2025年になって実現したという経緯がある。
つまり、9月開催への移行は猛暑・熱中症という別のリスクに対応した結果であり、台風リスクを軽視していたわけではない。ただし統計を見ると、皮肉にも9月は台風が最も上陸しやすい月にあたる。気象庁が公表している1991年から2020年までの30年平均(平年値)では、台風の発生数は8月が5.7個、9月が5.0個と8月の方が多い。一方で日本への接近数はどちらも3.3個で並び、実際に上陸する数は8月が0.9個であるのに対し、9月は1.0個とわずかに9月の方が多くなる。つまり「台風が生まれる数」では8月が上回るが、「実際に日本に近づき、上陸する数」で見ると9月がピークになるというねじれがある。これは、8月に南方で発生した台風の多くが日本の南で進路を変えて弱まったり逸れたりするのに対し、9月になると太平洋高気圧の張り出しが弱まり、台風が日本列島に向かう経路を取りやすくなるためだ。猛暑対策として8月を避けた結果、統計的には台風の当たり月に近づいたことになる。どちらのリスクも実在するものであり、今回の中止は「対策が裏目に出た」という単純な話ではなく、気候変動下で屋外イベントがどの季節を選んでも何らかの気象リスクと向き合わざるを得なくなっている、という構造の表れとして見るべきだろう。
拡大する音楽フェス市場、中止の重みも増している
ぴあ総研が2025年8月に公表した確定値によると、2024年の国内音楽フェス市場規模は434億円で、前年から11.5%増加した。動員数も前年比5.4%増の360万人にのぼり、コロナ禍からの回復を経て拡大が続いている。フェスを含む音楽・ステージ分野のライブ・エンタテインメント市場全体で見ても、2024年は前年比10.9%増の7605億円と過去最高を更新した。チケット1枚あたりの単価も、コロナ禍前の2019年が11,175円だったのに対し、2024年は12,062円まで上昇しており、1公演あたりの経済規模は動員数以上のペースで大きくなっている。
ロッキンは「国内4大フェス」の一つに数えられる規模で、1日あたりの動員が6万人に迫る。市場全体が拡大し、1公演の経済的な重みが増している状況で、その最終日を丸ごと中止するという判断は、来場者の安全確保という面では正しくても、興行的には決して軽い決断ではない。フェス市場が大きくなるほど、荒天時の「開催するか、中止するか」の判断がもたらす影響も比例して大きくなっていく。
払い戻し・振替の対応
ロッキンは前述の通り、21日の1日券・セット券・クローク・グッズプレオーダーを払い戻し対象とし、詳細な手続きは9月中に案内するとしている。SPARKは21日のチケットについて払い戻しが可能で、受付期間は9月24日23時59分まで、2日目・3日目への振替入場も選べるとしている。両フェスとも、中止・辞退が発生した当日の対応に限定して払い戻しの枠組みを示しており、来場を予定していた人は各公式サイトの案内を確認したうえで手続きを進める必要がある。
現時点で発表されていないこと
払い戻しの具体的な申請方法や開始時期、SPARK初日の来場実績や当日の運営状況、そして来年以降のロッキンの開催時期を再び8月に戻すかどうかについては、いずれも本稿執筆時点で公式な発表はない。これらは推測で補わず、続報が出た時点で確認する必要がある。
野外フェスの規模が大きくなり、著名アーティストが数多く出演する大型イベントになるほど、中止の判断は興行的にも重い決断になる。それでも今回、ロッキンとSPARKという近い性格を持つ二つのフェスが、同じ台風を前に「中止」と「決行」という別々の答えを出したことは、屋外イベント運営における安全確保の基準が一つではないことを示している。荒天時にどこまでリスクを取るかは、会場の立地やアクセス手段、出演者の移動距離によっても変わってくる問題であり、今後も台風シーズンと重なる日程で開催されるフェスが増えるなら、主催者ごとの判断基準がより注目されることになりそうだ。
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情報源
- https://rijfes.jp/2026/news/
- https://news.infoseek.co.jp/article/modelpress_4847190/
- https://www.famitsu.com/article/202609/88692
- https://natalie.mu/music/news/690468
- https://news.yahoo.co.jp/articles/eae23f9839359ec40e7aaee91801e6f33dfd48ee
- https://weathernews.jp/news/202609/210261/
- https://tenki.jp/bousai/typhoon/2625/
- https://www.data.jma.go.jp/typhoon/statistics/average/average.html
- https://ja.wikipedia.org/wiki/ROCK_IN_JAPAN_FESTIVAL
- https://www.fashionsnap.com/article/2022-08-12/rijfes-2022/




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