ラグビー日本代表は2026年9月19日、東京・秩父宮ラグビー場で行われたアサヒスーパードライ・パシフィックネーションズカップ(PNC)2026決勝でフィジー代表と対戦し、20-15で逆転勝ちした。前半を10-12とリードされて折り返しながら、後半に2トライを奪って逆転し、2019年以来7年ぶり、通算4度目のPNC制覇を果たした。フィジーには2024年、2025年と2年連続で決勝で敗れており、今回は3年目でようやくつかんだ雪辱となった。
前半10-12から後半2トライで逆転、20-15で決着
日本は前半7分、FBサム・グリーンのペナルティーゴールで先制した。その後フィジーが反撃してリードを奪い、前半22分にはHO原田衛のトライで日本が食い下がったものの、前半は10-12とフィジーに2点のリードを許して折り返した。
試合を動かしたのは後半だった。後半18分、FLベン・ガンターが逆転トライを挙げると、フィジーもペナルティーゴールで追いすがったが、後半32分にCTBサミソニ・トゥアが勝ち越しトライ。日本はそのまま20-15のリードを守り切り、試合終了の笛を聞いた。試合後のマン・オブ・ザ・マッチには、逆転トライを挙げたガンターが選ばれている。日本ラグビーフットボール協会(JRFU)の公式発表でも、19時05分キックオフ、最終スコア20-15、前半10-12という数字が確認されている。
終盤には想定外のアクシデントも起きていた。後半28分、キッカーを務めていたFBサム・グリーンが負傷交代し、代わりにFLの下川甲嗣が本来のポジションではないウィングに回る場面があった。残り2分を切った局面で下川は後方から一気に距離を詰め、フィジーの選手をライン際に押し出す際どいタックルを決めて追撃を断った。試合後の会見でジョーンズHCはこの場面を「最高だった。ディフェンスする位置まで走って、見事に決めたのは素晴らしい」と絶賛しており、控え選手の対応力が僅差の勝利を支えた形になった。
2006年発足、南太平洋の強豪と鎬を削ってきた大会
パシフィックネーションズカップは、2006年に日本、フィジー、サモアなどが参加して始まった「パシフィック・ファイブ・ネーションズ」を前身とし、2007年から現在の名称になった大会だ。環太平洋地域のティア2国(世界の中堅国)の強化を目的に、ワールドラグビー(旧IRB)主催で毎年行われている。2026年大会は日本、フィジー、カナダ、米国の4カ国による短期集中方式で、9月12日に東大阪市の花園ラグビー場で準決勝、9月19日に東京の秩父宮ラグビー場で決勝と3位決定戦が行われた。日本は準決勝で米国に63-14で大勝し、決勝進出を決めていた(本紙既報)。
逆転トライのガンター、タイ国籍から日本代表に加わった経歴
殊勲の逆転トライを決めたFLベン・ガンター(1997年10月24日生まれ、28歳)は、オーストラリア生まれで母の出生地であるタイの国籍を持つ選手だ。ブリスベンの高校時代に来日経験を通じて埼玉パナソニックワイルドナイツとの縁が生まれ、高校卒業後の2016年に18歳で来日。同年のトップリーグでは当時の最年少出場記録を更新した。日本代表としては2021年10月のオーストラリア戦で初キャップを獲得し、2026年7月時点で通算17キャップ。今回の決勝でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれ、代表でのキャリアの中でも最大級の結果を残した格好だ。近年の日本代表には、海外にルーツを持ちながら来日後に代表資格を得た選手が少なくなく、ガンターもその一人と言える。
2024年17-41、2025年27-33――2年連続で阻まれた「決勝の壁」
日本とフィジーは、2024年、2025年、2026年と3年連続でPNC決勝で顔を合わせてきた。2024年9月21日の決勝(大阪・花園ラグビー場)は17-41、2025年9月20日の決勝(米ユタ州)は27-33と、いずれも日本はフィジーに大差で敗れており、フィジーはこの2大会で連覇を果たしていた。世界ラグビーの公式発表によれば、2026年大会でフィジーが優勝すれば自己の記録を更新する大会史上8度目のタイトル、しかも3連覇がかかっていた。
その意味で、今回の20-15という僅差の勝利は、単なる1試合の結果ではなく、直近2年間フィジーの前で跳ね返され続けてきた「決勝の壁」を、3度目の挑戦でようやく越えたという文脈で読む必要がある。通算対戦成績も、今回の勝利を含めて5勝17敗。依然として大きく負け越している相手であり、フィジー戦での勝利自体、2019年7月以来4試合ぶりだった。それでも、この1勝が持つ意味は、対戦成績の数字だけでは測れない大きさがある。
準決勝63-14からの一転、大差ではなく接戦で掴んだ栄冠
ここで一つ、誤解しやすい点を整理しておきたい。日本は9月12日の準決勝で米国に63-14、得失点差にして+49という大勝を収めていた。この結果だけを見ると「決勝も一方的な展開になるはず」と考えてしまいそうになるが、実際の決勝の得失点差はわずか+5。同じ大会、同じチームでも、対戦相手が変われば試合内容はまるで別物になる。準決勝の大勝ぶりをそのまま決勝に当てはめて「楽勝」を期待するのは早計だったことになる。
試合後の会見でエディー・ジョーンズヘッドコーチは「この12カ月、ウェールズやオーストラリア戦など振り返ってみて、取りきれなかった試合があった。大事な勝負どころで遂行して勝利を得られたのは大きな収穫」と総括した一方、「アタックがまったく機能せず、セットプレーに頼って得点していた」「この1週間、アタックにこだわって準備してきたのに」と攻撃面の不満も隠さなかった。会見の最後には下川の劇的なタックルを引き合いに「どうにかこういう試合でも勝ちきることをチームで見いだせたことが評価できる」と結んでいる。1試合平均の得失点差という「正規化した数字」で見ても、準決勝と決勝の落差は明らかで、勝ち方の質がまったく異なる2試合だったことがうかがえる。
相手のフィジーにも触れておきたい。世界ランキング9位(試合前時点)のフィジーは、体格とフィジカルを生かした攻撃的なプレースタイルで「フィジアンマジック」とも呼ばれ、南太平洋勢の中でも屈指の破壊力を誇る。セニルシ・セルバクラ監督は決勝前、「我々は規律を守り、落ち着いてプレーすることが重要になる」と自軍の規律面を課題として挙げていた。3年連続でPNC決勝に進みながら日本に競り負けた形となり、大会最多を更新するはずだった8度目の優勝、3連覇はいずれも次回以降に持ち越しとなった。
世界ランキングは1桁台浮上の見通し、確定は9月21日
世界ラグビーのランキングは毎週月曜日(日本時間)に更新される。ポイントの増減は勝敗そのものだけでなく、対戦相手との力量差(ランキングポイントの差)や開催地(ホーム・アウェー)などを加味した方式で算出される仕組みで、格上に勝つほど、また接戦を制するほど得られるポイントは大きくなりやすい。国内スポーツ紙の報道によれば、今回の勝利を受けて9月21日発表分で、日本は試合前の12位から3つ順位を上げ、9位に浮上する見通しだという。実現すれば、2023年3月6日以来、約3年半ぶりの1桁順位への復帰となる。
ただし、9月20日時点ではあくまで「見通し」であり、正式な発表は9月21日を待つ必要がある。対戦相手のフィジーは試合前の時点で9位につけており、格上相手に勝ったことがランキング上昇幅を押し上げた形だが、最終的な順位は21日の公式発表で確認する必要がある。
9月19日という日付――「ブライトンの奇跡」から11年
今回の決勝が行われた9月19日は、日本ラグビーにとって特別な意味を持つ日付でもある。2015年ワールドカップ・イングランド大会の初戦、世界ランキング3位だった南アフリカ代表を34-32で破った、いわゆる「ブライトンの奇跡」が起きたのも同じ9月19日だった。今回のフィジー戦勝利は、その11年後の同じ日付に重なる。
偶然の符合ではあるが、無関係とも言い切れない側面がある。現在指揮を執るエディー・ジョーンズHCは、2012年4月から2015年12月まで最初の任期で日本代表を率いており、まさにブライトンでの南アフリカ撃破を指揮した本人でもある。その後イングランドやオーストラリアの指揮官を経て、2024年1月1日付で9年ぶりに日本代表へ復帰した経緯を踏まえると、同じ9月19日に再び大金星を挙げたことは、国内メディアが「メモリアルな勝利」と表現するのも無理はない巡り合わせと言えるだろう。
大会4度目のV、コロナ禍の中断もあった大会史の中で
パシフィックネーションズカップ(前身大会を含む)で日本が優勝したのは、2011年、2014年、2019年、そして今回の2026年の4回とされる。フィジーやトンガ、サモアなど南太平洋の強豪と互角以上に渡り合ってきた歴史がある一方、2020年前後は新型コロナウイルスの影響で大会自体が中止・縮小された年もあり、「前回優勝から何年」という物差しだけで単純に強さの推移を語るのは難しい時期を挟んでいる点には注意したい。単純に「7年ぶり」という年数だけを追うと、あたかも毎年開催の安定した大会でコンスタントに争ってきたかのように誤解しがちだが、実際には出場国やフォーマットが年によって変わり、コロナ禍による中断という「例外」を挟んだ上での7年間だったことになる。それでも、2024年、2025年と連続で決勝で退けられてきたチームが、2026年に星を返したという事実は、エディー・ジョーンズ体制でのチーム作りが一定の成果を見せた結果と受け止められている。
10月のフィジー戦、11月の欧州3連戦へ――2027年W杯を見据えて
日本代表は年内、10月24日にフィジーとのテストマッチを予定しているほか、11月にはウェールズ(7日)、イングランド(14日)、スコットランド(21日)と欧州の強豪と3連戦を戦う予定だ(いずれも現時点で発表されているスケジュールで、今後変更の可能性はある)。この3試合は、2026年に初開催される新大会「ネーションズチャンピオンシップ」の一環にあたる。同大会は、イングランド、フランス、アイルランド、イタリア、スコットランド、ウェールズの北半球6カ国グループと、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカに日本とフィジーを加えた南半球6カ国グループが7月と11月にそれぞれ対戦する新方式で、日本は招待国として初年度から南半球グループの一角に加わっている。初年度は昇降格の仕組みが適用されないが、将来的な入れ替え戦導入も検討されており、世界のトップ12カ国に準じる枠組みに日本が名を連ねること自体が、PNC制覇と並ぶ今シーズンのもう一つの節目と言える。
ジョーンズHCは優勝翌日の会見で、今夏の8試合を「大きな達成感」と総括し、「イタリア、フィジーという上位2カ国に勝てたことが収穫」と述べた。一方で選手層については「まだ1、2枠の余地はある」とし、特にトライを取り切れるウィングの不在を課題として挙げている。2027年にオーストラリアで開催予定のワールドカップまで1年余り。ネーションズチャンピオンシップでの欧州3連戦を含む秋のテストマッチで、どこまで上位国と互角の戦いができるかが、次の焦点になる。
まとめ 接戦の先にある「前進」の意味
20-15というスコアだけを見れば、僅差の辛勝という見方もできる。しかし、2年連続で決勝の壁として立ちはだかってきたフィジーに、3年目の挑戦でようやく土をつけたという文脈、そして自国開催で味方サポーターに囲まれた中での逆転劇だったことを踏まえれば、その価値は数字以上に大きい。準決勝の63-14という大差の勝利だけを覚えていると見誤るように、勝負を分けたのは派手な得点力ではなく、劣勢の前半を10-12でしのぎ切り、終盤の際どい場面でも1本のタックルを外さなかった粘り強さだった。世界ランキング1桁復帰が9月21日に正式に確定するかどうか、そして2027年ワールドカップへ向けたネーションズチャンピオンシップの欧州3連戦でこの流れを維持できるかどうかが、今後を占う次のポイントになる。
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情報源
- https://www.rugby-japan.jp/news/54210
- https://www.world.rugby/news/1046877/japan-crowned-asahi-super-dry-pacific-nations-cup-2026-champions-after-tight-win-over-fiji
- https://news.yahoo.co.jp/articles/6628bf6e768d6e3f235a9143b6811110a8e24bc2
- https://news.yahoo.co.jp/articles/a4cd1d7301eb22aa02245c8c7a3c357ac728357e
- https://news.yahoo.co.jp/articles/c4cc5eee274c7fce09e87bd21ed4e63b1f4b8755
- https://www.olympics.com/ja/news/rugby-men-pacific-nations-cup-2024-final-japan-fiji-result
- https://rugby-rp.com/2025/09/21/japan/134677




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